【JFA公認サッカー指導者ライセンス】オレ流指導で失敗した私がC級・D級を取って知った現場のリアルと費用・難易度
- サッカースクールや少年団の指導は無資格から始められるが、JFAライセンス(D級・C級)を取ることで「なぜその練習をするのか」を言語化できるようになる。
- 取得費用はD級が約1.5万〜2.5万円(1〜2日)、C級が約5万〜8万円(4〜6日間)。社会人でも週末講習で無理なく取得可能。
- 実技試験で落ちる人はほぼいない。不合格になるのは「指導実践で子どもの表情を見ずに自分のメニューを一方的に押し通した人」。
週末の河川敷グラウンド。かつて高校サッカー選手権を目指して本気でボールを追っていた私は、20代前半、意気揚々と地域の少年団やスクールのピッチに立っていました。
「オレの現役時代の経験を教えてやれば、子どもたちはすぐ上手くなるはずだ」――そんな傲慢な勘違いを抱えていたのです。
ピッチの外から「なんでそこで走らないんだ!」「もっと周りを見てパスを出せ!」と大声で叫ぶ日々。
しかし、子どもたちの表情はみるみる曇り、ミスを恐れてパスを味方に押し付け合うようになり、練習が終わると蜘蛛の子を散らすようにグラウンドから去っていくようになりました。
ある日、保護者の方から「先生の練習、子どもが怖がって行きたくないと言っていて……」と打ち明けられたときのショックは、今でも胸をえぐられるような痛みとして残っています。
「自分がやってきたサッカーの感覚だけでは、子どもを育てるどころか、サッカー嫌いにさせてしまう」
自分の無力さに打ちひしがれた私は、藁にもすがる思いでJFA(日本サッカー協会)公認の指導者講習会に申し込みました。
そこでインストラクターから指導実践中に受けた最初の一言が、私の指導者人生を根底から変えることになります。
「コーチ、今のプレーが止まったとき、あの子の目線がどこを向いていたか見えていましたか?
指導者の仕事は、自分の頭の中にある正解を押し付けることじゃない。子どもがピッチで何に困っているかを観察して、選択肢に気づかせてあげることだよ」
その瞬間、自分の「オレ流指導」がいかに子どもの成長を奪っていたかを痛感しました。
ライセンス講習で学ぶのは、難しい戦術ではありません。「子どもの発育発達に合わせた声かけ」「安心できる環境づくり」「サッカーの本質的な楽しさの伝え方」という、指導者として最も不可欠な土台だったのです。
JFA公認ライセンスの種類と費用・難易度の一覧
サッカー指導者ライセンスはピラミッド構造になっており、少年少女の現場で求められるのは主に「キッズリーダー」「D級」「C級」の3段階です。
| ライセンス名 | 対象・概要 | 講習日程・取得費用 | 難易度・合格率 |
|---|---|---|---|
| キッズリーダー | U-6(未就学児)〜U-10対象。 遊びを通じた運動の楽しさを学ぶ。 |
講習:1日(約6〜8時間) 費用:約4,000円〜7,000円 |
難易度:★☆☆☆☆ 受講のみで100%取得可能。 |
| JFA公認 D級 | 少年団・ジュニア指導の入門。 指導の基本理念と実技の基礎。 |
講習:1〜2日間(土日) 費用:約15,000円〜25,000円 |
難易度:★★☆☆☆ 合格率:ほぼ100%(真面目に受講すれば合格) |
| JFA公認 C級 | U-12年代の本格指導。 スクール専任コーチやクラブチーム監督の標準資格。 |
講習:約4〜6日間(分割受講可) 費用:約50,000円〜80,000円 |
難易度:★★★☆☆ 合格率:約85〜90%(指導実践・筆記試験あり) |
結論から言うと、無資格・未経験からでもサッカースクールのアシスタントコーチとして働くことは可能です。多くのクラブでは「入社後にD級・C級の取得費用を会社が全額負担してくれる制度」を設けています。まずは現場でアシスタントとして経験を積みながら講習を受けるのが最も効率的なルートです。
指導実践テストで落ちる人の共通点
C級講習会の山場である「指導実践テスト(受講生同士を選手に見立てて20分間のトレーニングを指揮する)」では、まれに追試や不合格になる人がいます。
不合格になる人に共通しているのは、サッカーが下手な人ではありません。
- 自分の指導案(メニュー)を消化することに必死な人:選手(受講生)がパスミスを連発して混乱しているのに、原因を改善しないまま次のメニューに進んでしまう。
- プレーを止めて長々と演説する人(フリーズの失敗):プレーを止めて指導する際、1分以上も長々と説教してしまい、選手の体温を下げてモチベーションを奪ってしまう。
- 「ナイスプレー!」としか言えない人:何がどう良かったのか、具体的に褒められない。
合格するコツはシンプルです。「事前に決めたテーマ(例:パス&コントロール)」からブレず、選手が成功した瞬間に『今のトラップの向き、最高だよ!』と具体的に認め、ミスが出たら『どこを見ておけばよかったかな?』と選手自身に問いかけることです。
無資格からサッカー指導者としてキャリアを始める3ステップ
「ライセンスを取ってから求人に応募しよう」と考えると、講習の開催時期(年数回)を待つだけで半年〜1年が過ぎてしまいます。最短で指導者になるステップは以下の通りです。
- ステップ1:スクールのアシスタントコーチ求人に応募する:週末や平日夕方、メインコーチをサポートするアシスタントとして現場に入り、子どもの扱い方や練習の空気感を肌で学ぶ。
- ステップ2:JFAラーニング等でキッズリーダーまたはD級を受講する:現場を経験した状態で講習を受けると、テキストの内容が驚くほどスッと頭に入ります。
- ステップ3:スクールのメイン指導を担当し、C級へステップアップ:クラブの支援を受けてC級を取得し、担当クラスを持つメインコーチへ昇格する。
ピッチの外から怒鳴るのをやめた日
ライセンス講習を終えてグラウンドに戻った最初の日、私はピッチの外から大声を出すのを一切やめました。
ベンチにどっしり構えて口を挟むのではなく、ボールが外に出た切れ目で「さっきあの子、裏に走ってたの気づいた?ナイス視野!」と笑顔で声をかけるようにしたのです。
すると、子どもたちの表情からビクビクした強張りが消え、目をキラキラさせながら果敢にドリブルを仕掛け、ミスをしても「ドンマイ!次行こう!」と仲間同士で声を掛け合うようになりました。
子どもを変えたのではありません。ライセンスを通じて、指導者である私自身の目が変わったのです。
指導者ライセンスは、履歴書に書くための単なる肩書きではありません。
大好きなサッカーを、子どもたちにもっと好きになってもらうための「魔法の眼鏡」です。ぜひ一歩を踏み出してみてください。